特別な君のために

練習用に割り当てられたスタジオで軽く発声練習と最後の練習をして、円陣を組む。

譲君が声を張り上げた。


「最高の歌を歌おう!」

「おーーーーー!」


金賞とか、全国制覇ではないところが、譲君らしい。

でも、一番大事なのはいい歌を歌うこと。

結果は後からついてくるから。

みんな笑顔で最後の練習を終わることができた。


控室では、みんなの緊張が最高潮になる。

「ソプラノ集合。みんなで最終チェック。全国ネットで黒歴史を作らないために!」

なるみがてきぱきとあぶらとり紙を全員分配り、スカートのひだやスカーフを細かく直している。

こういうところが、やっぱり頼れるパートリーダーだと思う。

私はこっそり、ランちゃんに耳打ちする。

「覚えておいて。将来パートリーダーになったら、こういう気遣いも必要だって」

「私が、ですか?」

「うん。なるみが言ってた。次の次のパートリーダーはランちゃんがいいって。気配り上手だから」

「ありがとうございます。頑張ります」


緊張して口から心臓が飛び出しそうな中、みんなで笑い合う。

大晦日に紅白歌合戦の会場となる、最高のステージで歌えるんだもの。

私達は本当に幸せだと……。

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