特別な君のために
普段はお金の無駄だと思ってやらないクレーンゲーム。
やってみても景品が取れたことはないし、やらないから上達するはずもなかった。
でも、今はこの不愛想な顔のカエルの軍人さんが欲しくてたまらない。
百円、二百円……。
手持ちの小銭がなくなってしまい、お財布の中から千円札を取り出した。
あれ、何でこんなにお金が入ってるんだっけ?
一瞬、わからなくなったけれど、そういえば昨日の病院代の残りをお母さんに返していなかったせいだとわかってほっとした。
少しくらい、使っちゃってもいいかな。
両替機の前で考えていたら、ぽんぽん、と肩を叩かれた。
「あ、すみません」
お先にどうぞと譲るつもりで後ろを振り返った。
するとそこには、ちょっと怒りをにじませた男の人の顔……って、まさか!
「美冬、だよな。部活はどうした?」
「えええっ! 奏多先輩!?」
今、一番会いたくない人、だった。