特別な君のために
「確か今日、部活あるよな? 今の部長……譲にそう聞いたぞ。まさかサボりか!?」
「い、いやあのこれには色々訳がありまして……」
そう言って、顔の前で右手を振ったところで、ちょっと指が痛くて顔をしかめた。
「訳って、それ?」
包帯がすぐに目に入ったのだろう、奏多先輩の表情から一瞬にして怒りが消えた。
「そう、です。これがきっかけです」
「ふうん。良かったら詳しく教えてくれない?」
そう言われて、考えこんでしまった。詳しく教えるということは、千春の障がいについても教えなくてはならないから。
「……」
黙り込んだ私に、奏多先輩はこう言い放った。
「タダで教えろとは言わない。さっきから取りたがってた、そのカエルが取れたら教えるっていうのでどう?」
「え? 見てたんですか?」
「うん。めっちゃへったくそな奴がいるなーと思ったら、美冬だったからさ。ついつい観察してた」
まさか、そこから見られていたとは。仕方がない、OBの言うことは絶対服従という縦社会の一員として。
「わかりました。カエルさん、絶対取ってください」