特別な君のために
そして、私の腕の中にはなんと。
隊長さんっぽいカエルと、新人の二等兵っぽいカエルと、特殊部隊にいそうなカエルと、衛生兵的なカエルと、楽隊所属であろうラッパを抱えたカエル、なんと五体が勢ぞろいしていた。
たった千円でこんなに取れちゃうなんて、奏多先輩、何者ですか……。
「さ、約束通り、語ってもらおうか」
フリースペースの端で、アイスコーヒーを飲みながら語ることになってしまった。
私の前には、奏多先輩。そのさらに手前には、カエルの軍隊がじいいっと私を見つめて励ましているようにも見える。
いや、大勢に取り囲まれて尋問されているといった方が近いかも知れない。
「この指、妹にやられたんです。洗面所のドアに挟まれちゃって」
「大変だったな。妹さんも後悔してるさ、きっと」
「いえ、後悔、という概念があるかどうか。妹は知的障がいを併せ持つ自閉症なんです」
ついに、打ち明けた。
奏多先輩の顔を直視できず、私は目の前の『隊長』を見つめた。
『よくやった!』
そう言ってくれた気がした。