特別な君のために
「へ~、初耳。じゃあ、お母さんの窓口に、お父さんがお客さんとして来ていたの?」

「そうよ。お父さん、毎回新幹線の切符を取るのにギリギリで窓口に飛び込んでくるんだもの、すぐ覚えちゃったわ」

「それは仕方がなかったんだよ。あっちこっちの現場で人が足りないからって駆り出されて、毎日飛び回ってたんだ」

何となく思い浮かぶ風景。窓口の終了時間ギリギリに、新幹線の切符やホテルの手配に来る、若かりし頃のお父さん。

勤務終了時間間際だけど、いつも丁寧に対応してくれる若いOLさん。

ちょっと、ドラマになりそうなシチュエーションかも。

「ふうん。それで、どっちから先に声をかけたの?」

私は二人を交互に見つめた。きっと今、最高にニヤニヤしているはず。

お父さんが、照れくさそうに手をあげた。

「もちろん、お父さんだ」

「どうしてっ!?」

茶碗とお箸を置いて、身を乗り出して聞いてみる。

親の恋バナなんて、初めて聞くけど面白い!

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