特別な君のために
少しの沈黙が、とても長く感じられる。
リビングの時計の秒針が、かすかに音を刻んでいるのがわかるほど、私達は静まり返る。
重い沈黙を破ったのは、お父さんだった。
「美冬は、それで本当にいいのか?」
「もちろん。私なりに色々考えて出した結論なの」
「今の話だと、千春のために大学を選んだようにも聞こえるが」
「ううん、ちょっと違うかも。千春がいたからこそ、私もこの進路を選ぼうって思えたの。だから、千春のためだけじゃないよ」
「それで、どこの大学なの?」
今度はお母さんが心配そうに聞いてきた。
「星路学園大学。ここの心理学部……えっと、福祉心理学科っていうところで、障がい者や障がい児、病気の人のためのカウンセリングを学びたいの」
私の話を聞いてすぐ、お父さんがタブレットPCで検索をはじめた。
お母さんも、自分のスマホをポケットから取り出して、音声入力で検索している。