特別な君のために
そして、お父さんと私のやり取りを見ていたお母さんが、重い口を開いた。
「一度きりの人生なんだから、美冬がやりたいことをやりなさい。千春のことも、私達両親のことも、何も考えずにね。それでも、その大学へ進みたい?」
お母さんの必死さが伝わってくる。
私には私の人生があり、千春とは別の人間であること。だけど姉妹だから、親が亡くなった後、私が千春の後見人になるだろう。
これだけ濃密に千春と関わっているのだから、せめて普段の仕事は、この道から離れた方向がいいのではないか、というのがお母さんの素直な気持ちだったらしい。
どうすれば、お母さんも納得してくれるかな。
そうだ!
「私はこの大学へ行きたいの。ここで、部活のOBから合唱サークルに入るって約束させられちゃったし、クリスマス礼拝で讃美歌を歌ってみたいし、だから、学費と一人暮らしの用意をお願いしたいの。すごく高いけど、いい?」
「もちろん。それぐらいお父さんがビル建てて稼いでくるさ」