特別な君のために
「でもね、本当に、お母さんはあなたに無理をしてほしくないの。美冬が好意で千春の面倒を見てくれているのは本当に有り難いけれど、だからって人生の全てを障がい者に捧げることはないっていうことは、わかってほしい」

お母さんは、さらに続けた。

「千春を寄宿舎に入れたのも、将来、お父さんとお母さんが死んでから、グループホームや施設に入所することを考えてのことなの。スムーズに生活できるかどうかは、今の練習にかかっているのだから」

それも、よくわかっている。わかっているけれど。

「私は自分が無理をしているなんて、思っていないよ。私が星路学園を選んだのは、千春が第一の理由ではないから。それは本当」

きっかけは、確かに千春の障がいだったかも知れない。

でも、直感的にこの大学へ進学したいって思ったのは、奏多先輩が楽しそうに話してくれたから。

……大学生になっても、歌いたいと思ったから。

「でも将来、私がどんな生活をしていたとしても、後見人としてしっかり千春のことは見ていくから」

「いいのか、それで」

「うん、いいの。逆にそれをやらないままにしていられると思う? 自分が楽しんでいる間に、千春が苦しんでいるとしたら、私は絶対に後悔する」

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