特別な君のために
「お父さん」
「何だ?」
「いつも遅くまで働いて、時々危険な現場で仕事をして、家でも製図を描いて家族を養ってくれているよね。お母さんが働きに出なくても済むように、きっとすごく頑張っているんでしょう?」
「まあ、そういう風に受け取ることもできる、かな」
なぜか、お父さんの顔が少し歪んだように見えた。でも、私は気にせず語り続ける。
「お父さんが仕事の愚痴をこぼしているのを、私は聞いたことがないよ。だけど会社では超厳しいんでしょ? 私達には甘いのにね」
くすくす笑いながら、私とお母さんは顔を見合わせる。
「私が高校に合格した時、とても喜んでくれたよね。お祝いに連れてってくれたディズニーシーで、私達以上に盛り上がっていたよね」
「そうそう、お父さんったら、子ども以上に大喜びしてたよね」
お母さんも同意してくれた。
「そりゃあ、可愛い娘の合格祝いだからな。お父さんだって嬉しいさ。……美冬には、たくさん我慢させていたし」
そう言って、お父さんが私の中指をちょん、と触った。