特別な君のために

お父さんがわざとらしく咳払いをして、明るい声を出した。

「まあ、我が家も振り返ると色々あったな。お母さんがしっかりしていたから乗り超えられたのだし、どれだけ傷つけられても、美冬が千春を可愛がってくれたことも救いだった」


……お父さん、ますます泣かせるようなことは言わないでよ。


「美冬はいつだって千春に譲ってくれていた。本当にいいお姉ちゃんで、お父さんとお母さんは助けられてばかりだったよ。美冬がしっかりしていたから甘えてしまって、こういう大事な話もギリギリになってしまって」

私は涙を拭きながら、強引に笑顔を作る。

「ううん、私がこういう話を避けていただけ。だって、私の進路の話は……」

「わかってる。千春と切り離せない。だからお母さんが絶対泣くから、だろ」

「ホント、お母さんって泣き虫なんだもん。だから私も……」

「似たもの親子、だな」


お父さんもうる目になっていることに気づいていないふりをして、私とお母さんはまた、泣き笑い。

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