伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

 朝方。ドロシアが目覚めると、目の前にはオーガストの色素の薄い肌があった。
腕枕をされていて、オーガストのもう片方の手は、ドロシアの髪を梳いて遊んでいた。


「目が覚めたかい? おはよう」

「お、おはようございます」


猫のオーガストならば自分から抱き締められるが、人間のオーガストには照れが出てしまう。
恥ずかしがっているうちに、オーガストが上から覆いかぶさってきた。


「お、オーガスト様っ。朝っ」

「うん、朝だね。でも僕も我慢の限界でね……」


有無を言わさずキスで唇が塞がれた。

何度も何度も繰り返されるそれに、だんだん抵抗する気力は失われてきた。
朝なのに、とは思うけれど、寝起きの状態だからこそいい具合に体の力が抜けている。

オーガストの手は、昨晩よりも丁寧に彼女の体を溶かしていき、ドロシアも昨晩で少し慣れたせいか彼を受け入れることに余裕があった。


鳥のさえずりに紛れて、ドロシアの甘い嬌声が響く。

昨晩の続きが始まったことを知ってか知らずか、部屋を訪れるものは誰もなく、その日、オーガストとドロシアは、夫婦として一つ目の壁を越えたのだ。



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