伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「……嬉しいです」
ドロシアの瞳を縁取った涙が、目尻からこぼれてシーツへと流れ落ちる。
「泣いてる。……僕は君を泣かせてばっかりだ」
ぺろりと目尻を舐められる。ドロシアは「これは嬉し涙です」と、笑って見せ、オーガストのなだらかな背中を撫でる。
「いい夫婦になりましょうね。ふたり、手を取り合って」
「うん」
ドロシアは、優しくほほを舐め続けるオーガストを抱きしめた。
「ドロシア、苦しいよ」
「思い出しました。私が最初に来た日もこんな風に猫だったあなたを抱いて寝ましたね」
「ああ、すごくよく寝ていた。……ちょっと違和感のあるほどにね。この屋敷には全体的に母のまじないがかかっているから、普通の人間にはもしかしたら負担に感じる部分があるかもしれない。……大丈夫かい?」
「負担……ですか?」
そういえばここにきてからやたらに眠たいし、寝ているときに体がこわばるような感じはある。しかしそれも、オーガストがそばにいると和らぐような気がするのだ。
「あなたといれば大丈夫そうです」
「ならいいけど」
オーガストがドロシアの頬を舐める。
「困ったことは何でも言うんだよ」
「はい」
それから数分のうちに、ドロシアは深い眠りに落ちた。心地よさそうな寝息を聞きながら、オーガストは心の底から猫になってしまうこの体質を呪った。