伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
8.誕生祭での悲劇

後ろでオーガストが縮んでいく気配を感じながらも、ドロシアはビアンカから目をそらさなかった。
正面にいるビアンカには猫化しているのは見えていないはずだ。しかし、ドロシアの陰に消えていくところはしっかり見られている。


「え? えっ、ひっ」


ビアンカは、先ほどまでと打って変わって悲鳴のような声をあげ、腰を抜かして座り込む。
ドロシアは咄嗟に位置をずらし、オーガストの服と本人を自分のドレスの中に隠した。


「き、消えたわ。ノーベリー伯爵が。どういうこと?」

「ほ。本当ね。おかしなこともあるものだわ。どこに行ったのかしら」

「おかしなことって……こんなのあり得ないわ……そう、これは魔法よ! あなたがやったの? あなたが魔女なの?」


詰め寄られてもドロシアは動けない。
なにせドレスの中には猫になったオーガストと彼の服があるのだ。これが見つかったら猫の姿のオーガストが見られてしまう。


「まさか。私にそんなこと、できないわ」

「いいえ。あなた魔女なのよ。私知ってるわ、本で読んだことがあるの。百年ほど昔には、この国には魔女がいて、たくさんの災害をおこしたんですって。あなたもそれね? 伯爵様を唆して、財産を乗っ取るため……そうでしょう? でなきゃあなたみたいな美しくもない娘が、伯爵家に嫁げるわけがないわ。……国王様に報告します。罰してもらわなくちゃ。……お父様! 早く来て、お父様!」


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