その笑顔が見たい
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。彼女の服にスープを飛ばしてしまって」
「休憩室にいたら少し聞こえました」
「そうですか。あの…不躾で申し訳ないのですが、先ほどの女性の部署はわかりますか?お名前を伺ったんですけど」
「部署が多いので、名前だけでは…どうかな?」
「総務部に事情を話せば教えてくれるでしょうか?」
メモに書かれていた女性の名前がチラッと目に入った。
『宮崎エリカ』
あー、隣の課のあの子か。まだこれから続く会議で、さっきまでコピーやお茶出しをしていた。
ますます面倒なことになりそうだと、やんわりと協力できないと断る。
「それよりも責任者に一度お話しされた方がいいですよ。きっときちんとした対処をしてくれると思います」
「あ、そうですね、そうします」
「大丈夫ですよ、あんな事言ってますが、クビになんてなりませんよ」
口から出まかせ。噓も方便。
さっきまで顔面蒼白だった中年女性が「それだと良いんですけど」と少しだけ目を輝かせた。
「それでは」
短く挨拶して休憩室に戻ると柳さんも喫煙ルームから出てくるところだった。
二人で肩を並べてオフィスへ戻る。
そのあと、食堂の女性がどうなったかは知る由もなかった。