その笑顔が見たい
さっきの行動はかなり目立ったに違いない。
騒ぎになっていると思いながらも意を決して食堂に戻った。
しかし普段と変わりない様子だった。
葉月はそのまま、裏から調理場へ戻った。
桜木はまだ同じ席にいた。
俺がいた席にはなぜか後輩が座っていて、俺のラーメンセットを食べていた。
「あー、翔ちん、葉月ちゃん火傷、大丈夫だった?ラーメン伸びちゃうから、タイミングよく来た上野(うえの)に食べてもらっちゃった」
桜木が目配せをした。
「え、ああ」
何が言いたいか理解するには時間はかからない。
「野村さん、ごちそうさまです」
「いや」
きっと葉月が火傷をしたから、処置しに慌てて出て行ったとかなんとか言ってくれていたんだろう。
気転のきく桜木の行動に今回ばかりは感謝していた。