その笑顔が見たい

部屋に着き葉月を招き入れる。
親元からこのマンションに移り住んで四年。
葉月が正真正銘の初めて部屋に入った女性。母親以外は…。

玄関から小さなキッチンとバス・トイレが並んでいる廊下を通り抜け部屋がある。
10畳近くあるワンルーム。


「へぇ…」


葉月が物珍しそうに部屋の中をぐるっと見渡す。
バルコニーから静かな公園が見渡せる。場所的には都心に近い。


会社の借り上げでもあるから家賃は相場よりもかなり安く借りられている。
広くはないが一人暮らしなら問題ない。
ベッドとテレビとローテーブルそして仕事をするためのデスクとパソコンがあるだけだった。
物が少ない分、乱雑にもならない。


「高校の頃のきったない翔ちゃんの部屋とは大違いだね」


「はっー?」


「キレイにしてる」


「あまり実家からものを持って来てないんだ。狭くなるし、取りに行けるし」


「おばさん、淋しがらなかった?」


「最初はね。今は帰っても雑な扱いだよ」


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