その笑顔が見たい

とりあえず座るところを探す。
ベッドの前にローテーブル。いつも寝に帰るだけのこの部屋でビールを飲むときはベッドをソファがわりにしていた。


「座ってて、着替えてくる」


ベッドを指すと「あ、うん」と葉月が少し戸惑いを見せた。
幼馴染で姉弟のように育ったんだ。
だから気にならないだろ?と言う雰囲気を醸し出す。


一応、脱衣所に行ってTシャツとスエットの部屋着に着替える。

「葉月はジーンズで窮屈じゃない?」

何気なく聞いた言葉だったのに

「…大丈夫」

葉月が恥ずかしがるとこっちまで意識する。
別に脱げとかそういうことじゃなかったのに、いちいち反応する葉月も俺を意識してくれているのだろうか?

コンビニ袋からさっき買って来たものを取り出していると葉月がアイスを買っていたことを思い出す。

「あ、アイス!」

丁度良いタイミングで話が逸れた。

「わー、溶けてるしー」

葉月がドタバタし始めた。
アイスのパッケージを剥がしながら、溶け始めたクリームを慌てて口に運ぶ。
大好きなアイスを頬張っている姿は昔のままの葉月。

「早く、食え食え!」


わー、きゃー、言いながら葉月が俺の部屋でアイスを食べている。
それが嬉しくて、あの頃に戻ったような穏やかな気持ちになった。




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