王様と私のただならぬ関係
 



「どうした?
 なんかよそよそしかったけど」

 ロビーで明日香と別れたあと、秀人は一緒に居た秋成に訊かれた。

「いや、一気に話を進めようとしたから無理が出たんだと思って」

 最初からやり直すことにしたから、昨日は電話しかしなかったんだ、と言うと、
「お前、意外と策士《さくし》だねえ」
と言われてしまう。

「なんでだ?」
と訊くと、

「ずーっとベタベタしてるより、間で少し距離を置いたりした方が、相手のことが気になったりして、盛り上がるじゃん」
と秋成は言う。

 いや、そういう深い考えはなかったんだが……と思っていると、
「でもまあ、気をつけろよ。
 意外とモテるから、明日香ちゃん」
という秋成に、意外は余計だろ、と思っていると、

「如月とか俺とか」
と言う。

 俺、いらないだろ、と思っていると、
「如月も意外といい奴だしな。
 俺も」
と笑っていた。

 ……だから、俺、いらないだろ、と思いながら、研究棟に戻る。




< 197 / 298 >

この作品をシェア

pagetop