王様と私のただならぬ関係
 大丈夫です、私は逃げませんよ、と言うべきなのか、どうなのか。

「でも、思ったより、美味しかったですね」
と話を切り替える。

 ハンバーグの付け合わせの野菜炒めを思い返しながら、
「殺人もやしも入ってなかったですしね」
と言うと、

「殺人もやし?」
と秀人が訊き返してくる。

「私、もやしのヒゲで死にかけたことがあるんです」

 歯にヒゲがささっちゃって、もやしだけ喉に落ちて、と説明しようとして、つまる。

 歯にヒゲがささったとか、女子的にどうなのだろうな、と思ったからだ。

 俯きがちに低い声で、
「……死にかけたんです」
とだけ繰り返すと、伝わったのかどうなのか、秀人は、

「そうなのか……」
とだけ言って追求してこなかった。

 そのまま、どう話を終わらせたらいいのかわからなかったので、
「他にも、殺人肉や、殺人白菜などがあります……」
と言って、また、

「そうなのか……」
と言われた。




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