王様と私のただならぬ関係
 ええーっ? と思ったのだが、その葉月と呼ばれた男は、すぐにまた試験管の方を見る。

「主任を無視か~っ」
と小笠原は男に向かい、毒づいていた。

 小笠原は溜息をひとつ、ついたあとで言ってくる。

「あいつは、葉月秀人(はづき ひでと)

 実は彫像なんじゃないかとか、立体映像なんじゃないかとか言われているが、れっきとした生きた人間だ」

 よかった。

 ポスターだとか訳のわからないことを言うのは私だけじゃなかったようだ、とホッとしていたのだが。

「いや、物の例えだ。
 本当に生きてないと思ったのはお前が初めてだ」
と言われてしまう。

 なんだかすみません、と苦笑いしていると、
「生きた人間なんだが」
と小笠原は渋い顔で繰り返し、

「ただ、ちょっと……変わってるんだ」
とまたも動かなくなった秀人を見ていた。

「ひとつのことに集中すると、ああやって動かなくなるんだ。
 あれ、試験管の中、見てるわけでもないんだぞ。

 全然、違うことを考えてたりする」

 はあ、なるほど、と思った。
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