お菓子の城
チラっと助手席を盗み見る。
あくまでチラ見。
悟られてはならない。私があなたのことを一時でも気に掛けているなどと、決して悟られてはならない。
「もう降ってくる」
そんなあなたは、流れ行く雲を見上げ、やっぱり雨が降ってくると断言する。
ごめんなさいね、雨女で。
心の中で謝罪する。おざなりに。ともすればそれは罵りにも近い。
だって__雨女を生んだのは、あなたじゃない。
あなたは私の父親なのだから。
私の、この世で最も忌み嫌う、父親なのだから__。
そんな父親と2人、車で出かけるなんて私、どうかしてる。
いや狂ってる。
これは夢だと言われたら、私はすぐに信じるだろう。