お菓子の城


「お菓子博、行く?」

何気ない風を装ってみたが、少し声が震えていたかもしれない。

私から話しかけるなんて、レア中のレア。しかもクエスチョンで終わっているから当然、アンサーを待つわけで。

両手を強く握り合わせ、膝をつき、天に祈った。

どうか断りますように。

病院があるからと断りますように。

でも私は、病院がないことを知っていた。カレンダーに丸印がない。決して検診を欠かさない、生に貪欲なあなたが、印を忘れるはずなんてない。

それなのに。

「チケットを貰ったの、2枚」

本当はほぼ定価で買わされたのだが、気づけばそう口にしていた。

そんなこと言おうものなら、この人は__。

「__行く」

「じゃ、明後日、8時に出るから」

そう言い残し、そそくさと自室に引っ込んだ。要件が済んだら、もう話すことなんかない。

ああ__。

ベッドに倒れこむ。

父と2人っきりで出かけるなんて__これは悪夢ですか?


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