お菓子の城


「うそっ」

思わず呟いた。ゾッとする__とは、このこと。

会場は長蛇の車の列。駐車場は離れたところで、そこからシャトルバスに乗らなければならない。

私はいい。

辛抱強い子に育てられた。

お母さんに育てられた。

でもあなたは「待つ」ということを、ほぼしない。

それなのに、にこやかにバスを待っている。1台目のバスに乗れなくても、にこにこしていた。私はつい、話題が途切れないよう、待つことを少しでも遠ざけようと話しかける。

「これ、お母さん」

携帯の写メを見せた。

私の宝物。

あなたが持っていない、宝物。だから私の携帯をぶん取り、食いつくように見ていたっけ。さすがに動画は無理だった。バスの中で泣かれては困るから。

それでも早めに出たのが幸いし、すんなり会場には入ることができた。

珍しいお菓子の抽選には外れたが、お菓子の展示会に行くことに。地図を手に、私たちは建物の中に入った。あまりの人いきれに、私は少し楽しくなってきた。

そしてそれは__あなたも同じだった。


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