お菓子の城


「仕事はどうだ?」

驚いたことに、沈黙の幕は下りなかった。

私が最近、転職したこともあり、仕事の話や、父のカラオケ喫茶の話など、意外と話題に尽きない。それでも半分は、母の話だ。私たち共通の、そして唯一、私たちを繋げていたもの。

存在はなくとも、思い出として今もしっかり、粘着の役割を果たしていた。

もう、3年になる。

母子家庭で育った私が、なんの因果か父親との生活を課せられてはや3年。

悲しみは、ぼんやりとした幕に覆われていった。

比較的はやく、悲しみより感謝が溢れた私とは違い、父は悲しみの沼にどっぷりはまっていた。ここ最近ではないか、ようやく片足を岸に上げたのは。

それほど父の悲しみようは、目に余るものだった。

「お父さんのこと、お願い」

見舞いに行くといつも、私にそう言ったお母さん。

お母さん、なんとか暮らしてる。

こうして親子で出かけてる。

話してる。

笑ってる。

笑ってるよ。


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