お菓子の城


傍らには__鷹?

「鷲やの」

いや鷹だろうよ、と震え上がるくらいの冷たい声も、今日に限っては聞こえてこない。

携帯で写真を撮る。

それを満足気に眺めている、父。

さっきから、私が撮る写真も「絶対」に支配されているのだ。

だから、意地悪してやりたくなった。

「写真、撮るから入って」

それは唐突。

慌てて城の前に立つ。

「鷹、隠れてる」

いつもなら「鷲やろ」と引き下がらない父の慌てようといったら__。

適当に何枚か撮る。

私のフォルダに仲間入りするとは、光栄ですね。

そんな私のほくそ笑みは、次の瞬間に凍った。

まさに凍てついた。

「良かったら撮りましょうか?」

「__大丈夫です」

大丈夫。

1枚くらいなら、メモリーに空きはある。でも、2人一緒の写真はいらない。その間に母が居るのならともかく、親子水入らずの写真はいらない。

大丈夫。



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