キミと秘密の交換恋日記
「教科書見せて」

アレイの机の上を見てみると、ペンケース以外なにも上がっていなかった。

わたしは朝のことを思い出す。

アレイは今日、転校してきてまだ教科書を用意していないんだ。

そして、わたしもこの日教室で受ける授業はこれが初めて。

音楽の授業は毎回プリントを使うから、わたしがアレイに教科書を見せてあげないとならないということを今知ったんだ。

「あー、うん。いいよ」

だからお昼が終わってもアレイはわたしの席と自分の席をくっつけたままだったんだ。

1時間目は誰に教科書を借りたんだろう。

つい、考えなくてもいいことを考えてしまっているわたし

小さく、本当に小さく。その疑問をわたしの古典の授業のノートに書いてアレイに見せる。

アレイは授業中に無駄話をしてはいけないと考えたのか、わたしのノートに質問の答えを書いてくれた。

―― 教科の先生に言って借りた。 ――

そかそか。

私は心の中で納得するが、誰か見せてくれる人がいたんじゃないかと思ってしまう。
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