春が来たら、桜の花びら降らせてね
「……ありがとな、冬菜」
夏樹君には、私の心の声が伝わっている。
それはきっと、君が私の心の声を必死に拾おうとしてくれているからなんだよね。
それがわかるから、私は君のために何かをしたいと思うのだ。
「俺が、冬菜に勝利をプレゼントしてやんよ。そんでもって、絶対に守ってやるから約束だ」
誓うように私の手を握り返すと、名残惜しそうにそっと離して、夏樹君は私に背を向ける。
「行ってくんな、ちゃんと見とけよ!」
行ってらっしゃい、夏樹君。
もう、聞こえないとは思わない。
きっと、夏樹君のことだから、私が君にエールを送っていることも、お見通しなんだろうなと思う。
遠ざかる背中に、私は祈るようにそう声をかけた。
どうか、夏樹君が怪我なく勝ちますようにと。
そして始まったクラス対抗リレー。
声援は嵐のように生徒の盛り上がりは最高潮で、勝負を見届けようと観客席から立ち上がっている。
夏樹君と琉生君の姿を探していると、選手列の最後尾に並んでいるのが見えた。
ふたりのために、あらかじめ用意されていた舞台かのように、まさかのアンカーだった。