春が来たら、桜の花びら降らせてね

「冬菜、俺のほうこそ、ありがとな」

「え……?」

お礼を言うのは私の方なのに、どうしてだろう。お礼を言われた意味がわからず、首をかしげる。

夏樹君は私の不思議そうな顔を見て、「ははっ」と軽快に笑った。

「冬菜のために、何かできたことが嬉しい」

「前から聞こうと思ってたんだけど……」

夏樹君の美しすぎる心への違和感。
そりゃあ、綺麗な方が害はないし、汚いよりずっと良いに決まってる。

むしろ世界にこういう神様みたいな人がいれば、争いもなくなるのになぁとも思う。

「夏樹君はどうして、私に優しくしてくれるの?」

でもやっぱり、怖くなる。
見返りを求めてくるわけでもない、なのに夏樹君の優しさは本物で、時々それが怖くなる。

どうしてかって、夏樹君の優しさの裏には、何があるのかなって。

疑ってないと言えば嘘になる。
信じて話した本心を、裏で笑いのネタにされたり、表では笑顔なのに、私がいない場所ではバカにして蔑んだり。

私は偽りの優しさしか知らないから、子供のように純粋な心で人を信じられないのだ。

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