春が来たら、桜の花びら降らせてね

「なぁ、冬菜の病気って……場面緘黙症……か?」

え……?
夏樹君から放たれた単語に、驚く。

この高校関わらず、世界単位で見ても、知らない人の方がほとんどだろう。

でも君は、戸惑いながらも迷わずそう言った。

「どうして……知ってるの?」

今度は私が戸惑うように尋ねる。
場面緘黙症はなっている本人ですら、成長するまで気づけない、誤解されやすい病気だ。

それを、夏樹君の口から聞くことになるなんて、思わなかった。

「……昔な、好きだった女の子が場面緘黙症だったんだよ」

「あ……」

夏樹君は、ぽつりと零した。
夏樹君の好きだった人……か。

それを聞いた途端、胸にひびが入ったように痛む。

私、どうしてこんなに悲しいんだろう。
夏樹君に好きな人がいることなんて、想像できたはず。

私とは違って普通の男子高校生で、優しくて、人から羨まれるような輝きを持っている。

君の意志とは関わらず、たくさんの人に好かれたはずだ。

ただ、それが寂しいと、傲慢にも思ってしまう。

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