私の二人の神様へ
「う~う~ぎもちわる~ぃい。あづいぃ~」
「自業自得。俺が気を利かせて、帰れって言ったのにおせっかいするからだ」
次の日、榊田君はベッドで唸る私を呆れたように見下ろし、血も涙もないことを言った。
「がんびょうした、私に言うごとばがそれ~?」
「『私は榊田君と違って、健康優良児なの。インフルエンザなんかにかからないわ』って豪語してこれだ。馬鹿丸出し。ほれ、みかんの缶詰だ」
私に器を渡すと、冷えたタオルで額を拭いてくれた。
「俺から仁のほうに連絡入れておくぞ」
そう、今日は紙飛行機命名日でうちの両親も佳苗さんの両親も仁くんの家に集まる日。
寄りによって、この日だなんて。
もしかして、榊田君が熱で苦しんでいる中、紙飛行機を飛ばしてたから、罰が当たった?
「……ざがぎだくん。お願い。私のがわりにいっで。もう出ないど間に合わないぃ」
「お前な。そもそも仁の子供の名前付けるなんて、自虐的なことするなよな。仁も佳苗も無神経過ぎる」
「仁ぐんのこと悪く言うなぁ~どうじても、私が付けだいの。お願い」
生まれてきた子の誕生を誰よりも喜んでいる、それをどうしても伝えたい。
「水野」
「お願い。ぜっだいに、私が」
榊田君は小さくため息を吐くと、テーブルの上に置かれた名前の書かれた紙を手に持った。
「絶対に、うまぐ飛ばしてね。仁ぐんに負けないでね。廊下からリビングに飛ばすから、まっずぐ……」
「わかった。この名前にしてやる。だから、安心して寝てろ」
彼が請合ってくれたなら、安心だ。
私よりも上手くやってくれるだろう。
「うん。ありがとう。いづも、本当にありがとう」
「上原にでも……。いや、あいつは逆に足手まといだな。瀬戸に様子を見に来てもらうように鍵持っていくからな」
それだけ言うと、コートを手早く身につけ部屋を出て行った。