浅葱色の忍

烝の戦い

何日も寝込んだ



「美賀子様より先に懐妊するなど!
許せない!!あんたみたいな姫の子など
慶喜様は、必要としていないのよ!
おろしなさいよ!!」




医師から懐妊が伝わっているはず





平岡は、珍しく体調を心配してくれた

そりゃそうだ

慶喜の子がいるんだ



梅沢は、相変わらず優しい

変わらないでくれることは、嬉しい



俺は、あれから誰とも口をきいてない




慶喜には、自分で言いたかった…


紅に気づいてくれたら
言おうと思ったのに……

やはり、必要としていないのかも



見舞いにもこないし
来るわけないけど


誰からも、おめでとうとは言われない




今日は、体調が良い




久しぶりに散歩でもしようかな



「烝華様 お久しぶりです」


美賀子が話し掛けてきた



ペコリと御辞儀した



「体調崩されて… 本当に、心配しました」


美賀子は、本当に俺を心配していたらしい
俺の姿が見えて、慌てて来てくれたのだ


地面についた美賀子の着物を持ち上げ
パタパタと叩く


「ま!私ったら!すみません!!
烝華様!お気になさらず!」



「あのさ……
お…私は、弱くないから
それに、あんたが思っているような
女でもない」



「慶喜様から、男勝りだと伺っております」



「そう なら、そっちこそ気にするな」




わざと突き放した言い方をした



「ふふっ 私にも気を許して下さるの?
嬉しい!!」


「……」



あぁ…… やっぱりいい人だ





「お腹触ると懐妊するらしいよ」


「え?」


「触る?」


「はい!」




美賀子は、そっとお腹に手を当てた
それから、せっかく叩いてやった着物を
パサリと地面につけた
膝立ちになり、お腹に耳を当てた




「不思議なものですね…
ここに命があるのですね…」
















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