浅葱色の忍
〝大丈夫〟なんて言っておきながら

その場で倒れるなんて

アホや…

説得力のカケラもないやん




甲斐甲斐しく看病をする女中が
平岡と梅沢が
見舞いに来たと知らせてくれた



気を使い席を外してくれるのは
いつものこと



「烝華 体調が回復したら慶喜様と
話をする機会をやるから
ちゃんと話をしろよ
胸にためこんでるやつ吐き出せよ」


「そうですよ
我慢なんて、しなくていいんだからね」


「あのさ……」


言い掛けて辞めた

だって、2人は俺の為に良かれと思って
気に掛けてくれているから


「ほら!そうやって黙る!」


「心を閉じ込めることはない
愚痴でもなんでも言っていいんだよ?
烝華は、ありのままがいいんだ
慶喜様は、烝華のそういうところが
好みだと言っていたよ」



慶喜がどんな気持ちとか
今は、どうだっていい


ただ……



俺が、なんのためにここに居るか




わからなくなったんや







2人は、本当に慶喜との時間を作った


それが、夜なのは美賀子への配慮なのだろうけど


話なんて……


する気もなさそうで

側室なんだから、当たり前なんだろうけど


今夜、抱かれることは辛くて




慶喜が眠ってから



いつものように布団を抜け

膝を抱えて声を押し殺して、泣いた




どうして…

子の名前すら聞かないのだろう

男の子か 女の子か

気にもならないのか?


忍になりたいと言っても


どうでも良かった?



なぁ? 慶喜…



俺は、必要なかった?



慶喜にとって役に立つのは、体くらいか?



痩せて貧弱さが増した

この体でも、欲求を満たせれば

それでええんか?
















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