イケメン兄の甘い毒にやられてます
…広いダイニングテーブルの上に、二人分の料理が並ぶ。

夕陽は、セーラー服にエプロン。長いストレートの黒髪をおさげにしている。

「…萌えるね、その格好」
「…だ、黙って食べてください」

からかう圭吾に、夕陽はタジタジ。とにかく今は、食べることに集中する。

「…通学路、分かる?」
「…」

…そう言えば、この辺の地理がサッパリわからない。朝陽に聞けばいいと軽く考えていたのが間違いだった。

「…ホント、何にも聞かされてないし、教えられてないんだな」
「…困った母親で」

そう言って肩を落とした夕陽を見て、圭吾は静かに言った。

「…仕事まで時間あるから、通学路教えるついでに、学校まで送るよ」
「…なっ!そんな!いいです!申し訳ないんで!」

あんな高級車に乗って登校なんてしたら、何を言われるか。

「…遅刻したいの?」
「…」

したくないです。心の中の、夕陽の声。

「…どうする?送ろうか?それとも自力で行く、ん?」
「…送ってください、お願いします」

「…素直で宜しい」
「…」

上目遣いに圭吾を見れば、圭吾は何故か勝ち誇った顔。夕陽は負けたと思わずにいられなかった。

…その後、片付けをし、白の高級車に乗り込み、通学路を教えてもらいつつ、校門近くまで送ってもらった。

…夕陽の心配は的中してしまった。

高級車、しかも、イケメンが学校まで送ってきたのだから、みんながみんな、夕陽達を凝視している。

「…ありがとうございました」
「…いいえ、頑張って…あ」

行こうとする夕陽に圭吾が声をあげた。

「…どうしたんですか?」

早く行きたいのに。

「…俺達、恋人同士に見えたかな」
「…なっ?!」

…行ってしまった。
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