black×cherry ☆番外編追加しました
「・・・」

怒られてしまった。

軽々しく、言った訳ではないのにな・・・。

ただ、嬉しかったから。
 
優しくされて嬉しいって、気持ちを伝えたかっただけなのに。

切ない思いでうつむくと、「なんだ」とまた怒られた。
 
「文句があるなら口で言え。前にも言ったけど、オレは察するとかできねえぞ」

睨まれて、気持ちがしぼみそうになる。

けれど私は、感じた気持ちを黒崎さんにわかってもらいたいと思った。

「・・・軽々しく、言った訳ではないんです」

だって、本当は、優しい顔で笑うのに。

この前だって今日だって、怒ったり、文句を言いながらでも私に付き合ってくれた。

「本当に、優しいなって・・・優しくしてもらって嬉しかったから。そう思ったから言ったんです」

言いながら、また怒られるかもという不安な気持ちと、伝わらないかもという寂しい思いが湧き上がる。

ここまででもう、私の頭はいっぱいいっぱい。

「だから、あの・・・それだけです!」

「は?」

これ以上、なにを言ったらいいのかわからない。

見つめられ、焦ったような気持ちになって、とりなすように頭を下げた。

「も、もう、そろそろ時間なので。どうも、ありがとうございました!」

黒崎さんに背を向けて、すぐさま桟橋を駆けだした。

唐突すぎる行動で、自分でも、どうしたいのかわからなかった。

「は・・・っ?ちょっ・・・おい・・・っ!」

黒崎さんの呼び止める声が聞こえたけれど、私は一目散に釣り桟橋を駆け抜けた。


今日は、ローヒールの靴で本当によかった。


そんなどうでもいいようなことを、走りながら考えていた。











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