black×cherry ☆番外編追加しました
それから約一週間が経過した、天気のいい日曜の朝。

真っ赤な外車の助手席で、海が近づく気配を感じた。

隣で車を運転するのは、父の姉である佐和子おばさま。

今日は、おばさまの知り合いがクルーザーに乗せてくれるということで、「一緒にどう?」と私も誘ってくれたのだ。

「咲良、海は久しぶりでしょう」

「はい。ここのところ、夏休みなのに家と大学とバイオリン教室ばかりだったので・・・空を見ていなかったし、気分転換になって嬉しいです」

「そうだよねえ、お母さまと桃子さんの監視がさらにきつくなったんでしょう?馬場さんから聞いてるよ」

佐和子おばさまが、赤い口紅をきれいに引いた唇を上げた。

あと二年で50歳になるおばさまだけど、いつまでも若々しくて美しく、いつも年齢を忘れそうになる。

「大学のバイオリンコンサートはもうすぐだもんね。それに、イケメン先生との婚約も控えてるんでしょう?へんな虫がつかないように、お母さまも桃子さんも必死なのよ」

今日は、伯母である佐和子おばさまとの外出なので、馬場さんの送迎なしに出かける許可が下りていた。

佐和子おばさまは、羽鳥家ではちょっとした権力をもっているのだ。

「婚約は、私はしたくはないんですけど・・・」

呟くと、佐和子おばさまはまた笑った。

「らしいね。でも、イケメンで仕事も出来る、ハイスペックな医者なんでしょう?悪くはないと思うけど」

「でも、急すぎるし、それとこれとは違うというか・・・。好きになるとは限らないです」

どんなにかっこよくっても。どんなに仕事ができると言っても、好きになるとは限らない。

私がそう言い切ると、佐和子おばさまは「ああー」と言って苦笑いした。

「そうだった、咲良はダメ男が好きだった」


(えっ!?・・・あっ、もしかして・・・)
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