black×cherry ☆番外編追加しました
(あっ・・・)


バシャン、とバケツの中の水面が揺れた。

幸い、こぼれたりはせず魚も無事だったけど、私は慌てて頭を下げた。

「すみません!めずらしくて、覗き込んでしまっていて・・・」

言い訳しながら頭を上げた。

すると、私を見下ろしている人物と、そのとき初めて目が合った。

「!」


(こ、この人・・・!)


その瞬間の衝撃は、例えようもなく大きくて。

私は大きく口を開け、しばらく言葉を失った。

背が高く、がっしりとした大きな身体。

端正と言われればそうなんだろうと思うけど、切れ長の目つきは鋭くて、睨まれているとしか思えない。

黒髪はやや短めで、厳つい雰囲気をさらに強調しているようだった。


(この人・・・絶対、『黒崎さん』だ・・・!)


なんでこんなところにいるの!?

逃げなければ!と直感で思った私は、少しずつ後ずさりをして、黒崎さんに頭を下げた。

「あ、あの・・・!ごめんなさい・・・!!」

大慌てで、踵を返しその場を去ろうと走り出す。

けれど、今日履いているのはヒールが高い華奢なサンダル。

桟橋の上を走るには、まるで向いていなかった。


(・・・あっ・・・!!)


10mほど走ったところで、思いっきりつまずいてそのまま地面に転んでしまった。

咄嗟に手を出したけど、膝を打ち、足首もひねってしまったようだった。


(痛・・・)


倒れ込んだまま足の方を見てみると、打った膝はすりむいて、じんわりと血がにじんでいた。

ヒールが折れた右足は、足首がジンジンいっている。
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