婚約指環は手錠の代わり!?
「海瀬課長、コーヒーどうぞ」

「ああ、ありがとう」

淹れてきたコーヒーにちらりとだけ視線を向けると、海瀬課長また書類に目を落とした。
額に落ち掛かってきた前髪を、さりげなく左手があげる。
そんな動作に。

……なぜかどきどきした。

「どうかしたのか?」

不意に海瀬課長が顔をあげた。
視線があうと、右の口端だけをあげて意地悪く笑う。
そういう視線には慣れてる、まるでそんな笑みに、恥ずかしくてとたんに顔が熱くなった。

「そういえば仕事の方はどうだ?
少しは慣れたか」

「はあ……」

云ってもいいんだろうか、武本さんのこと。
でも、云わなくても丸わかりな気がするし。

云い淀んでいたら、コーヒーを一口飲んだ海瀬課長が小さくくすりと笑った気がした。
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