婚約指環は手錠の代わり!?
ソファーから立ち上がり、帰ろうとすると止められた。
しかも、長身の海瀬課長から見下ろされると、威圧感がハンパない。

「反対に、なんで帰ったらダメなんでしょうか?」

海瀬課長の手が私の持ってるバッグを掴む。
抵抗したけど相手は男。
あっさりとその手に奪われた。

「後で買い物だって行きたいし、ここにいればいいだろう?
休みなんだから」

いや、その買い物に私は必要ですか?

しかし、帰ろうにもバッグという人質を取られては帰れない。

「そのー、返してもらえないですかね、バッグ」

「やだね。
返したら君は帰るだろ?」

にやり、意地悪く右頬だけを歪ませて笑う。

なんで帰ったらいけない?
そもそも、昨日のあれはなんだったの?

目が覚めてからの戸惑うほどの劇甘ぶりに忘れていたが、強引にキスされて、ベッドまで共にしてしまって。
その割に、好きだとか、付き合って欲しいとか。
そういう言葉はひとつも聞いてない。
< 62 / 136 >

この作品をシェア

pagetop