婚約指環は手錠の代わり!?
「昨日は、その、……なし崩し的に、その、……あれ、でしたが。
だいたい、私の邪魔をする理由、ちゃんと聞いてないです」

「まだわからないのか?」

じっと私を見つめる、眼鏡の奥の瞳に、喉がごくりと鳴った。

……だから。
これで、誤魔化されちゃいけないんだって。

少しずつ、海瀬課長の顔が近づいてくる。
ふいっと逸らしたら、右手で掴まれて海瀬課長の方に強引に向けられた。

「……朱璃は嫌なのか?」

眼鏡の奥、悲しげに潤んだ瞳。
そんな顔を見せられたら、ふるふると身体は勝手に首を振ってしまう。

「イヤ、ではないですけど」

「なら、問題ないだろ」

あ、そう思ったときにはもう遅い。
唇が重なってた。

慌てて閉じようとした唇からは、ぬるりとそれが差し込まれる。
どんどんと胸を叩いたって、がっつり腰を抱き込まれた。
離れようと背中を反らしてもかまわずについてくる。
限界まで反らしても腰で支えられてるから結局、逃げられない。

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