婚約指環は手錠の代わり!?
「これでわかっただろ?」

思考のままならないあたまで見上げた先、右の口端だけが僅かに持ち上がる。

……わかったって、なにが?

考えようにも海瀬課長の支えでようやく立っている身体では、思考は空回りするばかり。

「まだわからないのか?
もっと教え込む必要があるな」

海瀬課長の手が私の身体を滑り、膝の後ろに添えられた。
そのままあっという間に抱き抱えられ、寝室に運ばれる。
どさっとベッドの上に落とすと、なにをされるのか怯えてる私に軽く、口づけを落とした。

「昨日のあれでまだわからないみたいだからな。
十分わからせてやる」

にやり、いつもの右頬だけを歪ませる、意地の悪い笑み。

――そして。

 
まだまだ日も高いのに、またベッドの上で散々泣かされた。

「朱璃」

 
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