過保護な副社長はナイショの恋人
十九時になり、ソフィスティホテルの前に着く。定時過ぎに副社長から電話があり、ロビーで待っていてほしいと言われていたからだ。

「本当に来れるのかな……」

金曜日のホテルは、人が多く賑やかだ。旅行者のような人から、ビジネスマン、カップルまで様々いる。

緊張しながらロビーのソファーでしばらく待っていると、女性のヒソヒソ話が聞こえてきた。

「今の人、カッコよかったよね?」

「うん、うん。あんな人が彼氏ならなー」

二十代半ばくらいの女性ふたりが、頬を赤らめチラチラ入口の方を見ている。

そんなに素敵な人がいるのかと、同じ方向に視線を向けると、副社長が歩いているのが見えた。

辺りを見回している様子から、きっと私を探しているんだろう。

サッと立ち上がり、「副……」と言いかけて口をつぐんだ。さすがに人の多いなかで、“副社長”と声出すのは気がひける。

周りの注目を浴びせるだろうし、ためらいながらも名前を呼んでみた。

「ま、松谷さん!」

すると、噂話をしていた女性が、「なんだ、女連れ?」とボソッと言っている。

いろいろなことが恥ずかしくて、誤魔化すように副社長の元へ走っていった。
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