きみは宇宙でいちばんかわいい
トンプソン家のみなさんは、日本で生まれ育ったナニーさんや、お母さんはもちろんのこと、グランダさん、お父さんも、日本語がかなり堪能らしい。
彩芭くんと同じ金髪の、どこからどう見ても“イギリス人”という風貌のグランダさんから、日本語で「会いたかったよ」と言われたときは、感動して泣いてしまうかと思った。
わたしの好きな人は、こんなに素敵なご家族のもとで、生まれ育ったのだな。
だから、彩芭くんは、こんなに素敵な男の子なのだな。
そういえば、日本のおじいさんや、おばあさんに会ったときも、同じようなことを思ったのだった。
「それじゃ、俺たち、市内の観光してくるから」
話もそこそこに、さっそくわたしを引き連れ、再び玄関へ向かおうとした彩芭くんに、お母さんが「夕食までには帰ってきてよ」と告げる。
「今夜はご馳走の予定してるんだから」
「それ、朝から何回目? そんなに言われなくても、ちゃんとわかってるって」
その会話は、いかにも母親と息子という感じがして、世界中のどこでもこんなのって変わらないのだな、なんて、妙に感心してしまった。