170回、好きだと言ったら。
小学生の頃のあたしは、お兄ちゃんがよく言っていた「外は危険だから帰ったら家から出たら駄目」という言いつけ通り家にいたはずだ。
今に思えば、お兄ちゃんが帰って来ない理由の一つとして、喧嘩を見守っていたとは言えど、その場にいたのだから狙われるに決まっている。
テルくんはあたしを守るから、と傍にいてくれたがお兄ちゃんは離れることが守ることだと言っていた。
「…じゃあ、あたし記憶がないんですか……?」
「いきなり見知らぬ奴等に誘拐されたんや。
そら記憶やってなくなるけど…、それは起きてたらの話や」
「…起きてたら?」
「…アンタ、あの時こん睡状態に陥っとってん」
薬でも嗅がされたんやろ、と言う佐久間さんにあたしは思わず自分の身体を抱きしめた。