170回、好きだと言ったら。



もう手遅れだったがあたしはとりあえず頷いてみせた。


テルくんの熱い手のひらがあたしの頬に触れてゆっくりと髪に伸びる。猫のように擦り寄ったあたしに、また真剣な眼差しを向けたテルくんは、意を決したように口を開いた。



「……実衣、嫌な予感がしてたまらねぇ。
今は傍にいてやらねぇけど必ず帰ってくる。ちゃんと実衣の傍にいるから、今は待ってろ」

「テルくん……、あたし…」


助けを求めたいのに言えない。
手を伸ばしたくても、ただ君に触れては離すの繰り返しだ。


テルくんの胸板に頭を預けると、そのまま目を閉じた。例え君が傍にいなくても、寂しくないようにテルくんの鼓動を刻み付けておこう。


「…テルくん、会いに来てくれてありがとう」


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