170回、好きだと言ったら。



照れ臭くて顔を上げられなかったが、テルくんが唾を飲む音が聞こえた。


それからあたしの頭上で「実衣」と呼んで。



「……不意打ち駄目だろ、てか自惚れんなバカが」


いつもの意地悪な声ではなく、ぼそりと呟いたテルくんの声を聞いてあたしは満足した。



ゆっくりとテルくんが離れると、今から空港へ戻るらしい。本当にどうして会いに来てくれたのだろう。


あたしの方こそ嫌な予感がしていた。


もしかしたらこれでテルくんを見るのが最後になってしまうようで―、怖くて「テルくん!」と叫べば、テルくんはちゃんと振り返ってくれた。


その日見たテルくんの表情は―、今までで一番優しくて温かいものだった―……。


< 221 / 284 >

この作品をシェア

pagetop