そのくちづけ、その運命
「あ、雨ふりそうだね」

空全体に雨雲が広がっていた。
どんよりと薄暗い。

確か、今晩から雨の予報だった。
降水確率は90%。

しまった。傘持ってくるの忘れた……
もう少し暗くなってからだと思っていたのに。

「急ごっか」

「はい。あの……どこ行くんですか?」

わずかの沈黙。

あれ、私何かまずいこと言っただろうか。

不安になりながらドキドキして待っていると、


「ひみつ。でも心配しないで。ここから30分くらいのところだから」

「意外と歩くんですね…」

「うん。オレのお気に入りの場所」


真人は私が言ったことなど気にするそぶりもなく機嫌がよさそうだ。







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