私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
彼はIWATUKIのグループ会社のうちのいくつかの会社を経営し、数えきれないほどの人たちの上に立っている。
名の通ったタレントと違って、大きな組織の社長だと言っても、普通の人には顔を知られていない。
それでも、建物の中にいるたいていの人が、振り返って首をひねる。
彼はいったい何者だろうと思い出そうとして、すれ違う人を振りかえさせる。
強烈なオーラ―を持っていて、その魅力で人を引き付けていくのは、生まれ持った彼の魅力だろう。
圧倒的な存在感。
一言で言ってしまえば、そういうことだ。
ちょっと待って。
本気で私、そんな男と結婚するの?
考えれば考えるほど信じられない。とても現実的じゃないって。
見た目だって、釣り合ってない。
生活感も恐ろしくかけ離れてるし。何もかも違う。
やっぱり無理。思った通り、面倒なことになるなら、結婚なんかしたくない。
はっきりそう言おうって決めたじゃないの。
見てる分には目の保養になるし、彼は素敵なんだけど。
岩槻高陽と暮らすなんて、家の中でずっと息を止めてるようなもの。
もしかしたら、彼のいる家でトイレで水を流すのも難しいではないか。
私は少しの時間、遠巻きに岩槻高陽を観察する。
彼の噂は、だいたい同じだ。
超優秀だけど、クソが付くほど真面目だって噂ばかり聞こえてくる。
至極真面目な彼の性格からすると、私のような女には、興味を示さないだろうな。
彼からすると、私なんて、アホでつまんない女に違いないし。
彼は噂通り、よそ見もせず、にこりともせずに、まっすぐこっちに歩いてくる。