私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

んん?

何も聞こえない。しーんとした静寂が訪れる。

高陽さんが部屋にいると、時々咳払いする声とか、電話で話す声が聞こえてくるのに。

出かけて行くなら、車のエンジンの音が聞こえてくるはずだから、彼は家の中にまだいる。

どうして、そんなに彼のことを気にするの?

それは、彼がどこにいるのか居場所が知りたいから。

そして、彼と家の中で、うっかり出くわさないようにするために。

特に、部屋の前で鉢合わせしたり、階段ですれ違うのは避けたい。

どうしてそんなに気にするのか?

『結婚したんだ。当たり前だ。妻以外の女は抱かない。なんなら試してみるか?』
なんて言われたからだ。

どさくさに紛れて何て言った?君を抱きたいっていうこと?

ひょえーっ。

いやいや、それ、彼がせまって来たんじゃないって。
鼻息荒いって。
落ち着けって。

さっきのは、私が智也と浮気をしているんじゃないかって、確かめただけだって。

からかわれただけで、本気で迫ってきた訳じゃない。

もちろん私は、浮気なんてしてないから、疑われても身に覚えがないから毅然としていられるけど。

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