私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
襖がすっと開いた。
不覚だった。和室だから鍵が掛かってない。
思い切って体当たりして、彼の横をすり抜けよう。
こうなったら、覚悟して構えていたら。
高陽さんは、エプロン姿で立っていた。
口実ではなくて、本当に食事だったのですね。
そ、そういう気はないらしい。
ほっとしたのか残念なのか、よくわからない私。
「プロレスでもしてたのか?」
「いえ。ちょっと構えだけ」
何だかわからないけど、ジャガーのように爪を立ててるポーズをとっていた。
私は、拍子抜けして高陽さんを見る。
悪い事しそうにない。品行方正な、まったくの好青年。
ビジネスマンの夫が、食事を作るためにエプロンしているだけはないか。
さっきの取って食おうっていう獰猛な獣のような勢いは、まったくなくなってる。
嘘のように平然としてる高陽さん。
何で?この人は私に迫っておいて。
あ、あの勢いは?もう、終わりですか?
さっきの事は、忘れって言うの?
でも、まあ。
いいか。エプロンすごく姿似合ってるから、得した気分だ。
はっきり言って様になってる。
はっきり言って。かなり素敵。
見とれちゃう。レア高陽さん。
写真撮っておこうかな。