私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
「さあ、家に戻ろう」

「はい」
彼に促されて一緒に家に帰る。何日かぶりに家の玄関の前に立つ。

「明かりついてるのね」

「ああ」高陽さんが苦笑いする。彼が、ガラッと戸を開ける。

玄関の明かりがついて、中から人が出て来た。


「ええっ?なに?」



家の中に人がいる。高陽さん、どういうこと?

私が、驚いて何もできないでいると、相手の方がにこやかに笑いかけて来る。


「おかえりなさいまし」と言って、老女が深々と頭を下げている。

「しげさん、遅くなってごめん。食事は済ませてあるから」平然と答える彼。

「旦那様。お風呂のお仕度できておりますので」それに答える謎の老女。

上品なエプロン姿の老女が、絶妙なタイミングで高陽さんのカバンを受け取る。

「ああ。疲れたから先にお風呂に先に入ろうかな」自然な笑みで、老女に答える夫。

目の前の一連の動作に入り込む余地がなく、私は何もできずにただ眺めている。

「それでは、奥様も、ご一緒されてはいかがですか?」

何ですと?

「あははは。しげさん、今日は疲れてるからいいよ」
高陽さんが笑ってる。

そして彼は、私を置いてさっさと行ってしまった。


ちょっと待ってと彼を追いかけて行こうとしたら、老女に止められた。

「まあ、奥様。初めまして。しげと申します」

しげさんは、もう一度私に向かって頭を下げた。

「ええ、よろしくお願いします」

見よう見まねで同じように頭を下げる。

「まあ、何と言う。塔子お嬢様にそっくりですわね」

しげさんは、本当に懐かしそうに私を見た。

本当に、私の母を懐かしい目で見るように。

なんだ?

この人は……

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